花の散歩道
花がもつ魅力についてのワンポイント情報♪♪
花の散歩道 ④ 《花の世界》
[1] 花の友人
花を咲かせる植物、すなわち被子植物があらわれたのは、約1億5,000年前のちょうど恐竜の時代といわれています。 しかし、花を咲かせる植物が急激にふえるのは、およそ6,500万年前からです。 それは植物と昆虫の関係がとても親しくなったころでした。
花の歴史を6,500万年とするなら、約400万年とされる人の歴史は比べものにならないくらい短く――花はその歴史の9割以上もの年月の間、昆虫や鳥のためにひたすら咲いてきたことになります。 花のそれぞれの個性をあらわす形、色、香り、蜜の「装い」は、虫や鳥をさそうためにありました。 このように考えると、花とともに生きることをみいだした昆虫は、花の第一発見者であり、花の最初の友人といえるかもしれません。
では、人は、いつ、花を発見したのでしょうか。
1960年にイラクのシャニダール洞窟でネアンデルタール人の遺体のそばから発見されたもの、それはまとまった量の花粉でした。 洞窟のなかでは花は咲きませんし、もし風で吹き寄せられたなら、花粉は散在しているはずです。 密集した状態でみつかったということは、花を死者にささげていたことが考えられます。 少なくとも6万年前の人類が花を愛でる心をもっていたと推測されるでしょう。
日本ではどうでしょう。
日本でも1万1,000年前の縄文時代のごく初期ごろと4,000~5,000年前とに、墓に花がそえられていたことがわかっています。 長野県の野尻湖の縄文時代初期の遺跡の墓穴からは、トチノキ属やカエデ属の花粉が集中的に発見され――北海道名寄市と日高支庁門別町の縄文時代中ごろの遺跡の墓穴からは、初夏から初秋にかけて咲くキク科植物の花粉が多量にみられたのです。 このことから日本でも、縄文時代には野に咲く花の美しさを意識していたのではないかと考えられています。
こうしてみると、花の美しさを感じる心の歴史はけっして新しいものではありません。 花は古今東西、古くから私たちの暮らしに彩りをそえてきました。
そして長い間ずっと虫や鳥のために咲いてきた自然の花は、私たち、人のために咲くことになります。
自然の花は人の手によって品種改良をされ、さまざまな色、さまざまな大きさ、形の花が競い合うようにそろいました。 それらの美しい花たちにハッとするほど魅了される今日の私たち――ときには、本来の虫たちのために咲いた花、自然の花の美しさに思いをはせてみたいものです。